日本料理について。
峻険な山々が平地を分かち、季節の移ろいが寒暖をもたらす日本列島。 海の幸、山の幸、野の幸など、旬の食材をおいしく味わうために「だし」や調味料が生まれ、それぞれの地域に根ざした「郷土料理」や、食の美を追求した「割烹料理」などが育まれてきました。 日本食の基本である「だし」は、西洋や中国のだしと違い、食材の味を引き出す特徴があります。 この「だし」と深い関係にあるのが日本の豊かな「水」で、豊潤な軟水が「だし」を生み出しました。 「醤油」「味噌」などの調味料も、日本各地で特色ある産品が誕生しています。 「だし」を基本に、地域でつくられる調味料を使って、地場の食材をおいしく調理する。 そんな「味の地域性」が、日本の多彩な「食」を育んできたと言えるでしょう。 そもそも日本における「料理」は、貴族や武士などの食事作法に発祥し、時代とともに洗練され、発展してきました。各時代のなかで生まれた「精進料理」「懐石料理」「会席料理」などは、その本質を失うことなく受け継がれ、さらに現代の趣向に合わせつつ進化を続けています。 その一方で、庶民の食は江戸時代に大きな転換期を迎えました。 庶民文化の高まりとともに食文化も飛躍的に発達。 江戸の 「元禄グルメ」として一気に開花しました。この頃 寿司、鰻、蕎麦などの外食店が次々に誕生し、和製ファーストフードの原型ともなりました。 このような、日本の豊かな食文化の精髄とその背景を正しく理解してゆくこと。 それは、永い歴史の中で脈々と培われてきた日本「食」の真価を見直すとともに、世界に誇る日本の食文化を、次世代の子供たちに伝えてゆく「食育」の基本としても、大切なことであると考えます。